『Oranged Out』タイヨンダイ・ブラクストン
『Oranged Out』
タイヨンダイ・ブラクストンはポスト・ロック・バンドのバトルスの元メンバー。
バンドを脱退した後、モジュラー・シンセを用いた実験音楽を制作し、”この十年で最も評価されている実験音楽家”と言われるまでになった。
今作でもモジュラー・シンセをふんだんに使った、エクスペリメンタルな楽曲が楽しめる。
Track①からその実験性は発揮され、サンプル音とモジュラー・シンセのコラージュが耳に襲いかかる。しかし乱雑と重ねられているわけではなく、本人が”前作よりもハーモニーが強調されている”と話している通り、それぞれの音が考えて配置され、層を成し、一つの楽曲として成り立っているという印象を受ける。
Track⑤はアルバム最後を飾る9分にも及ぶ大作。ギター音だろうか、冒頭にフェード・インしてくる音に続き、パーカッションが小刻みに鳴り始める。そしてキックが入り、気分を少しずつ盛り上げ、途中から倍速で4つ打ちを刻む。左右からのモジュラー・シンセの音とともに、最後にふさわしいテンションの上げ方で曲は終わる。
近年モジュラー・シンセはブームとなり、制作に取り入れるアーティストも増えてきた。このアルバムはこれからモジュラー・シンセを使おうとする人にとって、参考となる作品だろう。